「ちょっこし形崩れたさかいて、なんやげん」そんな声が聞こえた。
雲の切れ間から伸びる暁(あかつき)の光が、温もりある太陽の存在を教えてくれた。
寝床を飛び立たった鳥たちが島の周りを忙しそうに飛ぶ。
わずかに残った頂の森に、巣作りの小枝をくわえた海鵜が何度も往復していた。
足元で優しく打ち寄せる波がブーツの泥を洗い流す。
静かな夜明け。ゆったりとした時間だった。
見附島は変わらぬ凛とした姿を見せてくれた。
こうして古から少しずつ形を変え、最果ての地に暮らす人たちを見守ってきたのだ。
「わっちゃ、わしはまだここにおるぞ。負けられんわいね」
「なにしとるげんて。春はもうそこまで来とるぞ。みんなしてやるぞ」
そんな声が確かに聞こえた。
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