地震による土砂崩れで被災し、住職が安否不明になっているお寺の現場で、幼馴染の友人が捜索活動を続けています。地元で土木建設会社を経営する社長です。重機を操り、自衛隊や消防、警察の捜索隊の手伝いをしています。彼は地震発生以来、一度も休んでいません。 彼とは、中学生の時に部活動の軟式テニスでペアを組んでいました。ですので、互いに性格はよくわかっています。ぶっきらぼうなところもありますが、責任感の強い男です。捜索の続く現場で写真を撮っていると、「あの社長さん、本当によくやってくださいます」と、京都市消防局の隊員が話しかけてくれました。
そんな彼がある日、同級生たちでつながっているSNSに「救助者見つからん、もう疲れた」と珍しく弱音を吐いてきました。同級生たちは心配のあまり、一斉に「いいから休め」「誰も責めないから寝ろ」と書き込みました。けれども彼は次の日も現場に立っていました。
捜索現場の敷地に被災を免れた小屋がありました。中には泥のついた仏具がいくつか並んでいました。彼は、捜索の合間に見つけた仏具を大切に取り置いていました。かたわらに、お供えのように、おにぎりが置かれています。
彼は、その冷めて硬くなったおにぎりを食べ、今日も泥の中で闘っています。
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